野球をやるときには、各ポジションの選手すべてが1つのボールに対して、状況に応じて動くことが大切です。ただし、少年野球の場合は、小学生がどう動いていいのかわからない。それは、プロ野球のテレビ中継も少なくなり、遊びで野球をできる場所が少なくなったことも考えられると思います。
少年野球を教えていると、まず、野球の基本「捕る」・「投げる」・「打つ」の基本を教えることが重要ですが、少年野球で勝つためには、必ずこうしたポジションでの動きを考えることが大切です。
ピッチャーは、まずは「バッターに集中して全力投球」
ピッチャーは、まずは目の前の打者に集中して「打者を抑える」ことが大事な仕事です。
第一打席(初対決)のときはバッターの特徴を予測しながらボールを投げてみて、第2打席以降は、そのバッターの苦手なコースなどを考えて予測することが重要です。これが、ピッチャーはバッターへの配球を考える。「ピッチャーの考える野球」といえるでしょう。
ピッチャーは投げ終わったら、「9人目の野手」
よく言われるのはピッチャーは、「投げ終わったら9人目の野手」といわれます。でも、少年野球の場合子供たちがこれを言われて思うことは、「自分のところにボールが来たら捕ってアウトにすればいい」という程度しか考えません。
自分のところにきたボールをアウトにするのは、確かに野球の基本中の基本ですが、ボールが飛んだ方向やアウトカウント、さらには、ランナーの有無によって動きが変わります。
この「自分のところにきたボール以外」をきちんと理解して動くことが「野手の基本」です。
ピッチャーの守備範囲(ボールを処理する範囲)
ピッチャーはバッターに集中して投げ終わったあと、バッターが打ったボールをピッチャーがどこまで処理したらいいかを考えると、下の図の黄色い部分になります。
ピッチャーは投げ終わったあとなので、「投げ終わった体制から前の打球を処理する」ことを考えましょう。投げ終わった体制よりも後ろの打球は、ショートやセカンドに任せてしまったほうがアウトにしやすいです。うしろの打球を捕球しても、投げるまでの動きで体制をくずしたり、変な体制で投げてしまって暴投してしまったりするので、ピッチャーの守備範囲は「投げ終わった体制よりも前の打球」を処理すると考えておきましょう。
【ピッチャーの守備範囲】
守備で考えておくこと①「バントやボテボテのゴロ」
ピッチャーがまず考えなければいけないのは、バッターがピッチャー正面の強い打球を打ったときや、ピッチャーよりも前にボテボテのゴロを打った時に素早く反応してボールを処理することがまず第1に考えておかなければいけないことです。
次に考えなければいけないことは、「セーフティバントや送りバントをしてきたとき」です。ピッチャーは投げ終わったあとに、正面に来たボールへの反応とともに、バッターがバントの構えをしたときに素早く前にダッシュして走り出すことも考えておきましょう。
ただ、セーフティバントや送りバントをするときのアウトカウントやランナーの状況については、以下のようなケースに多くみられると覚えておきましょう。
セーフティバントや送りバントをするケース
【ケース1】ノーアウトのとき
ノーアウトのときは、ランナーが「1塁」、「2塁のみ」、「1・2塁」のときに、セーフティバントや送りバントを警戒する。
ランナー |
セーフティバント
の有無 |
送りバント
の有無 |
ポイント |
なし |
◎ |
× |
1番や2番バッターまたは
下位打線などで
バントが得意なバッターの場合
(特に左バッター)は、
セーフティバントをしてくるケースが多い。 |
1塁 |
◎ |
◎ |
ノーアウトランナー1塁のときは
2塁にランナーを進めたいので、送りバントの可能性が高い。 |
2塁 |
◎ |
◎ |
ランナー2塁の時は、サードに取らせる送りバントやセフティーバントの可能性は高い。 |
3塁 |
△ |
× |
※ランナー3塁のときのバントは「スクイズ」としておこなう。(別途解説) |
1・2塁 |
◎ |
◎ |
2塁にいるときと同じで、サードに取らせるための送りバントやセーフティバントの可能性が高い |
1・3塁 |
△ |
× |
※ランナー3塁のときのバントは「スクイズ」としておこなう。(別途解説) |
2・3塁 |
△ |
× |
※ランナー3塁のときのバントは「スクイズ」としておこなう。特に2塁にいるときは、ツーランスクイズを警戒(別途解説) |
満塁 |
× |
× |
※ランナー3塁のときのバントは「スクイズ」としておこなう。満塁のときは、意表をついてセーフティースクイズをしてくるケースもある(別途解説) |
【ケース2】ワンアウトのとき
ワンアウトのときは、セーフティバントが得意な打者のときに警戒し、送りバントは、次のバッターが好調である場合は、2塁や3塁にランナーを進めるときに可能性が高い。
ランナー |
セーフティバント
の有無 |
送りバント
の有無 |
ポイント |
なし |
◎ |
× |
1番や2番バッターまたは
下位打線などで
バントが得意なバッターの場合
(特に左バッター)は、
セーフティバントをしてくるケースが多い。
(ノーアウトのときと同じ) |
1塁 |
◎ |
〇 |
ワンアウトランナー1塁のときは
バッターもランナーになるためのセーフティバントの可能性があるが、送りバントは、次の打者がヒットを打てる可能性が高いと考えたときに可能性が高い。 |
2塁 |
◎ |
× |
ランナー2塁の時は、サードに取らせるセフティーバントの可能性は高いが、送りバントは、ツーアウト3塁になるだけなので、あまり送りバントの可能性は低い。 |
3塁 |
◎ |
× |
※ランナー3塁のときのバントは「スクイズ」としておこなう。セーフティースクイズは可能性高い(別途解説) |
1・2塁 |
〇 |
× |
2塁にいるときと同じで、サードに取らせるセフティーバントの可能性は高いが、送りバントは、ツーアウト3塁になるだけなので、あまり送りバントの可能性は低い。 |
1・3塁 |
△ |
× |
※ランナー3塁のときのバントは「スクイズ」としておこなう。(別途解説) |
2・3塁 |
〇 |
× |
※ランナー3塁のときのバントは「スクイズ」としておこなう。特に2塁にいるときは、ツーランスクイズを警戒(別途解説) |
満塁 |
× |
× |
※ランナー満塁ときのバントは「スクイズ」としておこなう。ワンアウト満塁のときは、セーフティバントはダブルプレーになるケースが高いので、スクイズもバントも可能性は低い(別途解説) |
【ケース3】ツーアウトのとき
ワンアウトのときは、ランナーが「1塁」、「2塁のみ」、「1・2塁」のときに、セーフティバントや送りバントを警戒する。
ランナー |
セーフティバント
の有無 |
送りバント
の有無 |
ポイント |
なし |
◎ |
× |
1番や2番バッターまたは
下位打線などで
バントが得意なバッターの場合
(特に左バッター)は、
セーフティバントをしてくるケースが多い。
(ノーアウト、ワンアウトのときと同じ) |
1塁 |
◎ |
× |
ツーアウトランナー1塁のときは、バントのうまい打者であれば、セーフティバントの可能性があるので警戒しておく。 |
2塁 |
◎ |
× |
上記と同じく、バントがうまい打者の場合はセーフティーバントを警戒しておく。 |
3塁 |
〇 |
× |
上記と同じく、バントがうまい打者の場合はセーフティーバントを警戒しておく。 |
1・2塁 |
〇 |
× |
上記と同じく、バントがうまい打者の場合はセーフティーバントを警戒しておく。 |
1・3塁 |
〇 |
× |
上記と同じく、バントがうまい打者の場合はセーフティーバントを警戒しておく。 |
2・3塁 |
〇 |
× |
上記と同じく、バントがうまい打者の場合はセーフティーバントを警戒しておく。 |
満塁 |
× |
× |
※ランナー満塁ときのバントは「スクイズ」としておこなう。ワンアウト満塁のときは、セーフティバントはダブルプレーになるケースが高いので、スクイズもバントも可能性は低い(別途解説) |
守備で考えておくこと②「1塁ベースのカバーリング」
ピッチャーだけではありませんが、自分のところ以外にボールが飛んだ時にも、動かなければなりません。これが、「カバーリング」というものです。
ファーストがボールを捕った時に、1塁ベースのカバーをしなければいけません。
だから、ファーストやセカンド方向にボールが飛んだときには、ファースト方向にすばやく動きましょう。
ピッチャーが1塁ベースをカバーリングするケース
どんなときでも、ファーストが捕るような打球がとんだら、1塁方向に素早く動く。
ピッチャーは、どんなときでもファースト方向に打球が飛んだら、1塁カバーに動くようにしよう。
特に、1・2塁間に飛んだ打球で、ファースト(一塁手)が追いすぎてしまい、セカンドゴロになった場合、1塁ベースはがら空きになります。このときに、ピッチャーがベースカバーに走っていれば、1塁でバッターランナーをアウトにできます。
少年野球の場合、こうしたケースは多くあります。ピッチャーは、ファースト方向や1・2塁間への打球は、どんな打球であっても、必ず1塁ベースカバーに動きましょう。
守備で考えておくこと③「三塁手のカバーリング」
ピッチャーは、バッターに必死に投げても、ヒットを打たれるときがあります。ヒットを打たれたからといってガッカリしてマウンドにいるだけではいけません。
打たれるのは仕方ないことなので、次に考えることは、「1つでも先の塁に進めないこと」。
ランナーまたはバッターランナーの一つ先の塁の「カバーリング」も大事なピッチャーの役割です。
ピッチャーが3塁手をカバーリングするケース
ランナーなしのときに、2塁打(ツーベース)のような長打を打たれた時と、ランナー1塁で単打(ヒット)打たれたとき
ピッチャーは、ランナーがいないときに2塁打のような長打を打たれたら、すぐに三塁手のカバーに走ろう。打たれた後は、2塁まででランナーが止まってくれるように3塁手の後ろのカバーリングをしっかりやろう。
ランナーが1塁のときに、ヒット打たれたら、1塁ランナーが三塁に走ることを考えて、三塁手のカバーに動こう。
ランナー |
ヒットの場合 |
2塁打の場合 |
3塁打の場合 |
外野フライ |
なし |
特に動かない |
三塁のカバーへ |
×(次を参照) |
特に動かない |
1塁にいるとき |
三塁のカバーへ |
×(次を参照) |
×(次を参照) |
特に動かない |
2塁にいるとき |
×(次を参照) |
×(次を参照) |
×(次を参照) |
三塁のカバーへ |
3塁にいるとき |
特に動かない |
三塁のカバーへ |
×(次を参照) |
×(次を参照) |
守備で考えておくこと④「ホームペースのカバーリング」
ピッチャーは、点を取られるようなヒットを打たれた時は、本当にがっかりします。
でも、ガッカリしている場合ではなく、点をとられたことは仕方ないとわりきって、これ以上点数をやらなために、「カバーリング」をしなければいけません。
これ以上点をやらないためには、バッターランナーをできるだけ次の塁にはいかせないために、きちんとキャッチャーがエラーしたり、ホームペースへの暴投をしたときを想定して、ホームペースのカバーリングをすることが、これ以上点をやらないための大事なピッチャーのカバーリングです。
ピッチャーがホームベース(キャッチャー)をカバーリングするケース
ランナーが2塁にいるときとランナーが1塁で2塁打以上の長打のときは、迷わずホームベース(キャッチャー)のカバーリングに動こう。
ピッチャーは、ランナーが2塁にいるときにヒットを打たれたら、ホームベースのカバーに走ろう。また、ランナーが1塁で2塁打のような長打を打たれても、ホームベースのカバーに走ろう。
キャッチャーの後ろにカバーが入ることで、今度は、
チームメートに「どこに投げるかの支持」を大きな声で支持しよう。これも、ピッチャーのこれ以上点をやらない大切な役割です。
ピッチャーの大まかな動きは、下記のようにまとめました。
ランナー |
ヒットの場合 |
2塁打の場合 |
3塁打の場合 |
外野フライ |
なし |
特に動かない(声で支持) |
三塁のカバーへ |
ホームベースのカバー |
特に動かない(声で支持) |
1塁にいるとき |
三塁のカバーへ |
ホームベースのカバー |
ホームベースのカバー |
特に動かない(声で支持) |
2塁にいるとき |
ホームベースのカバー |
ホームベースのカバー |
ホームベースのカバー |
三塁のカバーへ |
3塁にいるとき |
特に動かない(声で支持) |
三塁のカバーへ |
ホームベースのカバー |
ホームベースのカバー |
【まとめ】
ピッチャーは投球だけで「打者を押さえる」のではない
少年野球のピッチャーの場合、多くの子供が思っているのは「三振で抑える」と思っていると思います。でも、実際にはヒットも打たれるし、自チームの選手がエラーをしてしまったりします。
野球は、「点を相手チームよりも多くとったほうが勝ち」というシンプルなスポーツです。
だから、「相手に点をやらないために」、ヒットを打たれたあと、自チームがエラーをしたあとのことを試合に出ている9人とベンチにいる控えの選手全員が、その先のことを考えてやるスポーツなのです。
だから、ピッチャーも、バッターを押さえられなかったから終わりではなく、バッターに打たれても、ランナーを一つでも少ない塁でストップさせるために、カバーリングに動くことが大切です。
【まとめ ピッチャーの守備範囲とカバーリングの動き】
以下に、それぞれの守備範囲についてまとめてありますので、自分が守るポジションについての基本の動きをよくおぼえてくださいね。